たくましく成長した「バケモノの子」

先日テレビでアニメの「バケモノの子」を見ました。

男の子の心の成長の物語です。

父親と離婚した母子家庭で育った男の子、蓮(9歳)が、突然母親が事故で亡くなって、親戚の家に養子として預けられそうになりますが、脱走。バケモノの世界へ迷い込みます。バケモノの熊徹(くまてつ)と、弟子として修行し始めます。

9・10歳頃から子どもは大きく変わります。それまでは、親の言うことも聞いて甘えていますが、このころから親のいう事は聞かなくなり、自立に向けての準備をします。この時期は、親と子のような上下の関係ではなく、親以外の大人との関係が重要です。例えば、昔であれば近所のおじさんやおばさん、今だと友達の親、塾の先生などの「ななめの関係」がこの時期の子どもを成長させます。

口が悪く、粗雑で不器用だが心は熱く強い熊徹のもとで、蓮は心身ともに強く大きく育ち、18歳になります。蓮にとって熊徹は父親的な存在であり、心の支えになっていますが、あるとき人間の世界に戻って、図書館である少女と出会い、勉強に目覚めます。大学受験をしようと大検の手続きをしに役所に行った時に、幼い時に別れた本当の父親の居場所がわかり、再会します。

蓮は、人間界とバケモノ界を行ったり来たりしながら成長していくのですが、バケモノ界にはもうひとり、蓮とは対照的な人間の子(一郎彦)がいます。一郎彦は、赤ん坊の時にバケモノの猪王山(いおうぜん)に拾われ、猪王山の本当の子どもとして育てられました。猪王山は熊徹とは対照的に紳士的で優しく強いバケモノです。それゆえ一郎彦からも尊敬されているのですが、その優しさから猪王山は、一郎彦が人間の子なのに、自分の子だとうそをついて育ててしまいます。一郎彦は、成長とともに自分が人間であることに気づきつつ、うそをつかれていることに孤独感をかかえ、心の闇に支配されてしまいます。

人間は、心の闇(孤独感、虚無感、無意識、恨み、妬み、怒りなど)を抱える存在です。周りの人たちから支えられている自分を自覚し、感謝できた時に、心の闇に支配されない本当の意味で強い自分、大人になれます。

青少年期の子どもたち(特に男の子)に、何が必要なのかを考えさせてくれるよい映画でした。