はじめて「自我」を日本に持ち込んだ森鴎外

高校3年生の現代文の授業で森鴎外の『舞姫』があります。

高校生の感想文の多くは、主人公豊太郎に対する批判が多いです。

留学先で妊娠させた女性を捨てて日本に戻ってきた、ひどい男だと。

しかし、注意してほしいのは、時代背景が現代ではないということです。

明治時代の人たちは、まだ自我が目覚めていません。

国(藩)のために生きている人たちです。

自分の私情、家族への愛より国家の方が重かった時代です。

国のためなら女性を捨てることぐらい何の問題もありませんでした。

でも、豊太郎は苦しみます。

豊太郎は自我に目覚めながら、一方では自我をつぶされていきます。

『舞姫』は、自我なんて持ってなかった当時の日本人に、

初めて自我の概念を持ち込んだという歴史的に意義がある作品です。

人間は一人では弱いために組織をつくります。

しかし、ある時点から組織のために一人ひとりがあるべきだという逆の論理に転換します。

逆にそれを利用する個人もいるわけですが、

本当は、個人を犠牲にするような理不尽な組織の論理を変革していける自我と、

それぞれ個々の自我の連帯が必要とされているのだと思います。

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